eiga worldcup2019 自由部門審査員による全体講評





自由部門第二次審査員からのコメント 地域部門審査員からの全体講評
稲垣尚夫 (美術監督/日本映画大学客員教授)
エンドロール等がない作品が目立ちます。どこも少数で撮っていることは想像がつきますが、スタッフの存在を感じない作品は悲しいですね。
また、全体を通して美術の存在がはっきりしないです。
今回はエンドロール等に美術スタッフの名前が載っている作品を対象に美術賞を選考しましたが、監督と兼任だったり撮影と兼任だったり・・・
「絵を造りこんで撮影する」・・・高校生にとっては経済的にも手が届かないかもしれません。
でも工夫や発想にはお金はかかりません。
¥100ショップのものでも十分に作れます。
また、美術の仕事はリアルの中に紛れて見抜けないことも事実です。
みんな私たちに見つけ出せないところで頑張っていることと思いますが・・・
撮影機材や編集ソフトの急激な発展によって誰でも映像を撮れる時代です。映画を撮るのか・・・
YouTubeの投稿動画を撮るのか・・・
高校生たちの映画の観念が問われる日も近いのかもしれません。
奥田誠治 (松竹(株)映像企画部エグゼクティブプロデューサー)
ドキュメンタリー作品の扱いが非常に難しいと思います。全体を通して今の高校生の抱えている問題や興味の方向性が非常に良くわかりました。
クオリテイーは良く頑張っていると思います。どの作品も個性があり大変面白かったでした。
掛須秀一 (編集・ポストプロデューサー)
全体として技術レベルは相当上がってきている。ただ、録音に関してはまだその領域に達していない。音楽をオリジナルでチャレンジしている学校が少ないのは残念だ!
久連石由文 (録音技術者)
今回も撮影時に録音した同録のセリフを使用した物が、多く見受けられる。
録音した環境によってセリフがはっきりと認識できない為。観ていてストレスになる事があるのでストレス無く聴けるようもっと工夫をすると良い。
もう少しセリフの重要性を考えて作品作りをした方が良いと思います。
竹嶋和江 (フリーアナウンサー、フリーライター)
機材性能の向上もあるとは思いますが、プロ顔負けのカメラワーク、編集には驚かされました。
良い意味でも、悪い意味でも、そつなくキレイにまとまった作品が多い気がしました。そうした作品は、コンテストでも上位に残ったりしますが、観客の心に残るかというとまた別問題。技術的に多少未熟でも、「作品のここを見てほしい!」という熱い思い、汗臭さを感じた作品は心に刺さります、残ります。改めて映画は総合芸術であり、情熱だと感じました。AI化が進んでも、映画は血の通う人間にしか作れませんね。
今回、原発、不登校、LGBTなど難しい問題に向き合った作品がありました。背伸びをし過ぎてリアリティがないものもありましたが、私はそのチャレンジ精神を評価させて頂きました。
これからも『身の丈』に合わない挑戦をし続けて下さい。
篠本賢一 (俳優・演出家)
今年は、死を意識した作品、マイノリティを扱った作品、映画製作現場をモチーフにしたバックステージ作品などが多いように感じた。
前二者は現代の問題として重要だし、それらを理解していくために作品が多数作られていくのだろう。それは時代の中から生まれた作品で価値があるが、反面、映像表現にこだわった映画独自の文法を持ったユニークな作品をもっと見てみたいとも思ったことも事実。社会と向き合うシリアスな作品と並行して、これぞザ・ムービーと言わしめるような独特の美学で描かれた作品も作っていって欲しい。二次審査にエントリーされる作品の演技者はどなたも高い技術を有し好演だった。
おそらくに人数の関係から演技賞のノミネートから外れてしまったが、「クランクアップのその先に」の夏目あずさ役の菊池美咲さんには主演としての輝きがあったし、「キラルキラきらキラid」のさくら役、貝本恵さんは助演としての存在感に優れ、私個人としては十分評価したいと思っている。
「Nah Nah Teen」の演技者のみなさんからは演技することの楽しさが画面から伝わってきて気持ちよかった。「日本一大きいやかんの話」は、渾身のドキュメンタリーで価値のある作品。映画の中で語られているように、実人生の中で原発、エネルギー問題の追及を継続していって欲しい。
田中一成 (撮影監督)
観客に見やすい画面作りを考えて撮影して欲しい。カメラのオート設定を使った露出やピントが多くの作品で見られたが、表現するということはどのくらいの明るさで撮影するか、どこにピントを合わせるかなどの積み重ねで作られていくということを考えると答えが出ると思う。

ドラマでは登場人物の会話を如何に撮影するということが大切で、イマジナリーラインなどの映画文法を学んで欲しい。それによって会話が成立し、観客の理解を深めることができる。そして会話からそれ以上の心理を表すことができる。

映画はそういうもので、あくまでも会話の垂れ流しではないことを考えて欲しい。今回ジンバルを使った撮影が沢山のグループで見られたが、効果的に使っているところは少ない。長回しで延々後ろをつけているような表現もあったが、それだけで終わっていて、それ以上の効果的なものは見られなかったのが残念だ。
教育奨励賞審査員からの全体講評
山川直人 (東京工芸大学芸術学部映像学科教授)
驚愕しました!下克上でしょうか?戦国時代?あるいは日本史でいうと、本能寺の変や,黒船来航のような思いもよらない大異変です。『クランクアップのその先に』と『余情分のθ』(次点として『キラルキラきらキラid』)はプロが作る映画から見ると、出演者が演技しているように見えたり、シーンが精査されてなかったり、アングルやフレーミングが気持ち悪かったり、編集ポイントのツメが甘かったり、そういう劣っていると見られるところが、逆に他では味わえないくらいの貴重な価値のある魅力を強烈に放っています。

より良い映画を作るために技術を磨いたり、見識を駆使してあらゆる手法を試しながら試行錯誤して表現技法を身につけたりする努力の成果よりも、素朴さとか拙さとか、純真さとか、ビギナーズラックとか、何気なさとか、つまり努力のなさが人の心を揺さぶるのです。プロには逆立ちしても作れません。

いえ、でも本来これこそが映画の魅力です!人々が映画に惹きつけられるのはそういうものを求めているからだと。壮絶です!そんなことを思い知らされました。そしてこれは、より良い映画を作るために日々努力しているプロの方々や、より良い映画を作るためのノウハウを教えると言っている教育者への挑戦状かもしれません。もちろんそんな気は無いでしょうが。。。

自由部門第一次審査員からの全体講評
松本ツバサ (英語と日本語のバイリンガルディレクター)
自分が学生として映画甲子園に応募してから約10年振り、今度は審査する立場でまた映画甲子園と関わることが出来て感慨深かったです。
最近の高校生がどういう作品を撮るのか、若い才能も見れて、嬉しかったです。
大人だからといって作れるわけではないですが、まるで高校生が作っているとは思えない重みのあるシリアスな作品から、思わず声に出して笑ってしまうようなコメディ作品まで、色々な作品があって飽きなかったです。
10年前と比べて思ったのが、カラーグレーディングの技術が上がっているなと思いました。今やCMも映画もほとんどがLogで撮っているので、若いうちからグレーディングの工程を意識して制作することは大事だと思います。一方で、映像の基本でもある "光"、"照明"への意識が薄いかなと全体を見ていて感じました。
映像の美しさは、そこを意識した途端、格段に良くなるので今度映画を観る時にでも、そこを意識して頂けたら嬉しいです。
あともう一つ言いたかったのが、安全面の話。刃物が出てきたり、屋上で撮影している作品が多かったですが、そういうのをやめろと言っているわけでは全く無いですが、映像作りは安全第一なので、命だけは大切にしてください。
木下順介 (監督、俳優)
全編を観て、高校で映画部に所属するタイプの高校生はとても真面目な人が多いのだなと感じました。

何だこれは、というような無茶苦茶な作品を作る人がいなかったのがびっくりしました。それと女子高生の前髪がたいがいおでこを隠していたり、登校にはみんなリュックを背負っていたりと、その辺りも新鮮な驚きでした。CMCのやりとりが作品の中に煩雑に出てくるのも、今の高校生の生活を表していて面白かったです。映画としての感想としましては、全体に言える事として、録音状態が悪いのか、滑舌が悪いのか、出演者のセリフがイマイチ明瞭に聞き取れない、という課題がありました。これはプロの俳優さんでないので仕方ない部分なのですが、作品によってはまるで何を言ってるのかわからないのもあり、とても残念だと感じました。テーマ選び、作品の狙いはどの作品も素晴らしかったです。

きっとこういう事を表現したくて頑張ってるんだな、というものは全ての作品から伝わりました。それを表現するときの、それぞれの学校の持っている方法論や伝統みたいなものも垣間見れて、それもまた部活らしいなと微笑ましかったです。

具体的な技術の部分で言いますと、撮影と編集、に関しては最もプロと差がある部分なのですが、成城学園の作品の撮影と編集に関しては相当にレベルが高く驚きました。同じ甲子園という事で例えれば、この撮影と編集は野球の星稜高校の奥川投手のような即戦力のドラフト1位候補です。それと監督の感性や演出能力、映画の脚本構成力という点では、小金高校の「独り占め」がダントツの才能と輝きを放っていました。ドキュメンタリーでは、タイトルも含めて「日本一大きいヤカンの話」が抜群の出来でした。私は何の先入観もコメントも事前に読まず、単純に作品だけを最初から最後まで淡々と観ました。

今回の審査を通し、これからの日本の未来を支える素晴らしい感性に出会え、心から感謝しています。私は映画を創る世界中の全ての感性を尊敬しています。どうか高校生の皆様がこれからも映画に触れ、撮影し、人生が豊かなものになる事を心から祈っています。このような機会を与えていただいた全ての出会いに心より感謝いたします。ありがとうございました。
森岡道夫 (映画プロデューサー)
今年も「高校生のためのeiga worldcup 2019」の時期がやってきました。私がこのお仕事をお引き受けして今回6年目になりますが、皆さんの作品に出会えるのを楽しみにしておりました。

というのも年々レベルが向上してきて、優れた作品を発見出来るからなのです。ただこの催事はコンクールなので、佳作・入選作品は当日発表になるわけですが、競い合った末にぎりぎりの所で見送りになる作品が、数多くあることだけはお伝えしておきたいと思います。

次に私の考え方を述べますと、一般的には映画を見る場合、先ず情報をキャッチし、予備知識を得た上で、選択して映画を観ることになりますね。ところが皆さんの映画に関しては、白紙の状態で接することになるわけです。事務局から送っていただいた応募資料を見て初めて手がかりを得ることが出来るのです。先ず私の眼に飛び込んで来るのは、「作者のコメント」。ここには、この作品を企画した動機や、細かい作品の内容紹介、さらには作品の見どころ等が記されています。これによりわれわれはある程度の知識を得ることが出来るのです。次に予告編。これでさらに知識の幅を広げることになるのです。そしていよいよ待望の本編映像の鑑賞へと進んでゆくのです。ですからこの3点セットをひっくるめて一つの企画提案であると考えています。

長文になるのでここまでにしておきますが、審査の仕事といえども、差をつけるために見ているのではなく、まず作り手と同じ土俵に立って作品の世界を共有することを心掛けているのです。結果は後からついてくる来るものなのですね。
佐野智樹 (映画プロデューサー)
友情、恋愛、親子の葛藤、ジェンダー等個人の内面に介在する悩みをテーマにした作品が全体の7割(全体を見渡した上での印象なので実数ではない)も占めていたのは意外な発見だった。

高校生というのは内なる自分を見つめ直す人生で最初の時期なのだろうか。これほどテーマが偏るとは思わなかった。
心の内へ内へと掘り下げていく展開が多くなり、どれも結末が類型的に感じられてしまったのは残念だった。
テーマを描くことに専心してしまい、それが悪いというわけではないが、結果的にテーマと結論だけを描くに終わった作品も目に付いた。予算、時間、技術、人員などいろいろな問題があるのは分かるが、もっと意欲的に物語を紡ぐ努力と工夫、何より鑑賞者の目を意識した映画作りを今後に期待したい。

エンタテーメントに走った作品は既存のTV番組や映画の模倣が多く、現代の高校生にしか描けない新鮮な息吹と驚きの発見を期待した者には少々物足りなさを感じた。

全ての作品を見終わって、しっかりした構成、明確な美術的センスと確かな撮影技術で製作された成城学園高等学校メディアアート部の「かたおもいが終わる時」と「からっぽ」、現代の世界が抱える大きな問題を正面切って精力的に取材して廻った東京学芸大学附属国際中等教育学校のドキュメンタリー「日本一大きいやかんの話」の3作が強く印象に残った。
他にも印象に残る良い作品はあり、それらはアイディアや物語の切り口は面白いのだが完成度で今一歩の惜しい物が多く、もう一踏ん張り頑張って欲しいという願いを込めてこの3作より低い点を付けている。
デジタルシネマの普及と共にコンシューマ向けのカメラや編集ソフトが学校単位はおろか個人でも手軽に扱えるようになった。加えてYoutubeなどネット配信という作品発表の場も手軽に利用できる今、映像製作の敷居は下がり誰でも映像作家を名乗れる時代になっている。だからこそ、よりいっそうの想像力や創作力を発揮しなければ”映画製作”ではなく単なる”映画作りごっこ”で終わってしまう怖い世の中でもある。その点に留意して今後の一層の活躍を期待したい。
最後に技術について何点か。

今回の審査では技術(撮影・照明・編集・録音・整音)についてはさほど減点対象とはしなかったが、それでも見やすい映画を作るためには最低限の技術は習得して頂きたい。
必要な時はおっくうがらずに三脚を使う、画面の水平出しをしっかり行う、きちんとピントを合わせる(できる限りAFは使わない)、バックノイズにも心を配る、の四点を守るだけでも格段に見やすい映像になるので参考にして頂ければ幸いである。

採点は5点〜10点(ただし10点満点はないものと考える)の範囲で行っている。
西村昌巳 (NPO法人映画甲子園理事)
伝統というとまだ少し早いのかもしれませんが、今年は常連校の個性が明確になってきているように感じました。おそらく、機材の質や校舎の雰囲気が過去の先輩の作品との一貫性を感じさせる部分もあるとは思うのですが、企画や脚本などにもそれが見られるような気もしました。例えば、横浜翠嵐高校の「PRB」は、おそらく横浜翠嵐高校でしか作られないようなタイプの作品ですし、同様のことは阿倍野高校の「阿倍高侵略計画」や大磯高校の「Liberty」や山村学園の「私立探偵」、坂戸高校の「心細道」にも言えると思います。

一方で、これは毎年みられることではありますが、部活動というよりも一代限りの映画愛に基づいた個人が作品を出してくれるとことも多々あり、そういった作品は、より個性が際立っていたように思いました。
また、今年の特徴として、先生方の協力によって作品に厚みが出た作品も多かったのは、大変、よい傾向だと思います。今後、この傾向はどんどん展開させて行って欲しいと思いました。

さらに言えば、今年は自分や社会を深く掘り下げるような作品が増えていたような気がします。例えば、愛知県瑞陵高校の一連の作品は、ともすれば独りよがりとも取れる作風ですが、精一杯自分を表現しようとするその足掻きは、表現者としてきっと将来につながっていく資質だと思います。他にも、栄光学園の「そこにいない自分」のほとんどセリフを廃した長回しで自分とは?社会とは?と問いかける手法はとてもユニークに思えました。さらに圧巻だったのは東京学芸大学附属国際中等教育学校の「日本一大きいやかんの話」です。今までにはない時間と費用と知性を結集したドキュメンタリーは高校生離れした出来栄えだったと思います。

他にも多くの作品がオリジナリティに溢れた輝きを持っていたのが今年の大会の大きな進歩だったと思います。
自由部門第一次審査員(演技担当)からのコメント
広田豹 (俳優、演出家、アクティングコーチ)
映像演技特有のテーマに、セリフ収録時の音質・環境の問題がある。今年は多くの作品で、セリフの聞き取りに苦労した。

作品によっては何度も繰り返し見て内容を理解したが、普通は観客は一回で聞き取れなければ、そこは理解しないまま先に進む。録音品質が悪いときは、俳優が大きな声ではっきりしゃべる技術を要求される。
逆に録音品質が良ければ、俳優はりきむ必要がなくなり、演技はより自然で繊細にすることができる。フィルム映画とちがい、ビデオカメラの動画はすぐに再生して演技チェックをすることも可能だ。そのメリットを最大限に活かして、自分たちの演技が観客に届くときにどのように見えるのか、聞こえるのかをよく研究してほしい。
中原くれあ (女優、演出家、アクティングコーチ)
皆さんの作品を通して、皆さんの街の匂いや空気を感じることができて、とても楽しかったです。

そしてもちろん、皆さんの映画にかける想いを受け取りました。
テーマ性は、本当に幅広く、皆さんにとって身近な友達や学校、家族での問題、また社会問題を扱ったもの、そしてジャンルもドキュメンタリーから実験的なものまで、76作品、個性的であり、豊かな才能にを感じました。

「演技」に特化すると、私の「演技」に対しての評価ポイントは、@役が与えられた状況設定の中で生きているか?(俳優の演技から、俳優が置かれている状況を観客が信じることができるか?) A相手役とやり取りができているか?(相手の演技を受けとり、そこから次の自分の演技へ繋ぐことができているか?) B演技がセリフを言うことだけにならず、相手役の内面を変化(動かす)させるための行動(アクション)(呼吸も含めた身体性)を伴っているか? です。 @からBがうまくできると、演技に自然とリズム感も生まれると思います。もちろん、これらができている人たちもたくさんいましたが、覚えたセリフを言うことで精いっぱいの人たちもいました。映像だと、シーンを短く撮影し、編集することができてしまうので、うまく演技をしないと、やり取りが全く繋がって見えず、セリフを聞いていれば内容はわかるのですが、単調になってしまうという難しさがあると思いました。監督さんは、映像でどう見せるか?という面白さもあると思いますが、俳優の演技にももう少しこだわりを持って制作してもらえると、より素敵な映像作品になるのではないかな?と思いました。もちろん、俳優さんたちももっとしっかり自分の役を理解し、セリフを自分のものとしてカメラの前に立てるように、頑張ってください。

皆さんの作品から、多くの素敵な瞬間を発見し、私の栄養となりました。ありがとうございました。 
中原くれあ
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